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1.重点研究
海洋は、地球表面の約70%を占め、地表とは異なる特異な環境を形成している。海洋は、古くから人類に大きな恵みをもたらしてきたが、将来におけるエネルギー資源の確保、地球環境保全、持続型社会の構築など、21世紀に必須な課題の解決にも大きく貢献すると期待される。特に、四面を海に囲まれた海洋国家日本にとって、海洋開発は極めて重要な課題であり先導的に技術展開し、国際貢献すべき領域である。
海洋は、@全ての元素を含む高塩分溶液であり、A低濃度であるが大量の資源を含み、B特異な生物・化学反応が進行し、C環境緩衝作用と広域汚染を示す、反応場として特徴づけられる。当所ではこのうちAとBに着目し、海洋を多様な生物・無機資源の宝庫、人類の残された産業フロンティアと位置づけ、海洋資源開発を柱として研究を展開してきた。海洋資源部では、海水溶存資源の採取と利用、海洋生物資源の利活用など海洋成分の精密分離・選択変換技術に関する研究を重点的に進めてきた。また、基盤技術部では極限条件下での加工技術など海洋開発の基盤技術に関する研究を進めてきた。これらの研究成果として、海洋無機資源を利用したウィスカー、海洋多糖類を利用した生分解プラスチックや音響板などユニークな材料を実用化している。また、水中溶接技術はメガフロート計画において採用されるなど極限加工技術として注目されている。
海洋資源開発研究をさらに高度に推進するため、海洋水圏における物質認識、生物生産、極限反応などの諸現象をミクロな視点からモデル化し設計する「海洋水圏における機能の分子デザイニング」手法を提案し、新たな観点から機能性材料の開発研究を進めている。海水中の超微量成分に対する特異的認識・分離材料の開発、海洋多糖類の生物生産技術および産生多糖のミクロ複合化技術などの研究を推進している。また、アーク現象の高速可視化、アブレーション現象のその場解析など加工基盤技術をミクロな視点から解明し、新たな極限加工技術としての展開を進めている。これらはいずれもナノ・ピコ領域における機能解明と材料設計技術として位置づけられる。
本年度は、引き続き海洋資源開発に関する先導的な研究を推進する。海洋無機資源分野では、「海水リチウム吸着剤」、「軽元素同位体分離剤」について、基礎的な研究に止まらず実用的な観点からの研究に展開する。また、新たに「メタン吸蔵体」の開発研究を5年計画で開始する。生物資源分野では「多糖類ポリマーアロイ」「反応性グリカン」など、多糖類を利用したリサイクル材料の開発研究について体制をさらに充実して推進する。また、「海洋生物機能の解明と応用」について、深層水の有効利用、油分解技術などを重点に研究を進める。基盤技術分野では、「水中自動加工技術」、「表面改質した高性能海洋部材」開発のための基礎的な研究を進める。さらに、化学系グループと連携した「海洋微生物付着防止技術」の研究を進める。
2.連携研究
四国地域の産業技術の振興のため、当所の研究ポテンシャルを生かした産学官連携研究を積極的に推進していく。重要地域技術研究「精密表面加工」、「非整備環境における作業支援」に関する3件のテーマを継続して進める。また、新たに先端型重地プロジェクト「高効率・高信頼性溶接技術」に関する研究を5年計画で開始する。地域コンソーシアム研究「電磁波吸収材料」、「耐摩耗材料」、「高精度マニュピレーション技術」プロジェクトは中間段階を迎えることから、更に精力的に研究を充実する。科学技術庁地域先導研究「海洋微生物培養」、「深層水応用」についても大学などとの連携を充実させる。
海外との連携に関しては、特に海洋開発に係わる研究機関との共同研究体制を強化していく。国際研究協力特別研究「製塩工程副産物の高度利用」については、今年度が最終年度であり、日本・中国両国にとって有意義となる成果の発信をめざす。また、新たな国際共同研究を立ち上げる努力をする。
これら連携研究をさらに充実させるため、産官学連携推進センター、地域コーディネーター機能を強化し、新規の連携プロジェクトを積極的に提案し遂行するための体制整備を進める。また、四国通産局の技術政策企画官への併任を継続し、四国地域の技術政策の立案、遂行に貢献していく。
3.独立行政法人化に向けて
来年4月から、当所は独立行政法人化し新たな組織として再出発することが決定している。したがって、今年度は新体制への移行の準備期間としても位置づけられる。現在、四国拠点としての新たな組織のあり方について活発な議論を進めている段階である。産業技術に関する先端的な研究を進める四国拠点として、国際的に通用する高度な研究ポテンシャルを維持、発展するとともに、地域拠点として四国地域の産業振興に貢献できる新たな組織の構築をめざして努力していきたい。